井の頭公園の生き物たち | 第1回「 モツゴ 」

2018.01.09

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』創刊号 2011年11月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

オスが卵を懸命に守る

関東の池や川に親しんで育った人には「クチボソ」という地方名のほうがピンとくるかもしれません。その名のとおり、おちょぼ口をした小魚です。

井の頭池の水が濁り水草が失われた後も、モツゴは繁栄を続けていました。フナなどと違って、水中の岩や枝に産卵し、オスが卵を汚れや敵から懸命に守る習性があるからです。しかし現在、誰かが放した外来魚、オオクチバスとブルーギルが大増殖し、モツゴは絶滅寸前です。

井の頭かんさつ会は2007年8月から調査と外来魚の駆除を続けていますが、いったん減ってしまった モツゴ は数を回復できていません。この魚の激減は、それを食べて命をつないでいた生き物にも大きな影響を与えました。対策が遅れたのは、濁った水の中で起きていることを気にかける人がほとんどいなかったせいです。

現在、井の頭池の一角ひょうたん池にモツゴなどの保護池を造る工事が行われています。2008年に、使われていなかった西園プールにモツゴ58匹を避難させました。外敵が少ないプールで順調に増えていたのですが、西園の整備のためプールが撤去されることになり、新たな避難場所が必要になったのです。引越しは2011年11月13日(日)の予定です。

その後は、外来魚が侵入していないか、 モツゴ などが順調に繁殖できているかなどを確認するため、保護池を継続的にモニタリングします。水を抜いて外来魚を全て駆除する、井の頭池の「かい掘り」が実現するまでの活動になります。モツゴのオスのように、しっかりと見守り、世話をしたいと思います。

 

田中 利秋  井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』創刊号 2011年11月1日発行 掲載)

モツゴ

ブルーの モツゴブルーの モツゴ (2011年4月の調査時)
外来魚がいなければ モツゴ は増える。


→ 第2回「オナガガモ」

 


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井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞 いのきちさん 創刊号

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