井の頭公園の生き物たち | 第2回「 オナガガモ 」

2018.01.12

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』2号 2012年1月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

臨機応変 賢いカモ

首が長いスマートなカモです。ロシア北東部で繁殖し、日本には冬越しと来期の繁殖相手を見つけるためにやって来ます。オスは、到着時はメスに似て地味ですが、ほどなく鮮明な繁殖羽に換わり、尾羽が細く長く伸びます。

一見似ているカモも、種類によって形や色に違いがあり、好きな食べ物や環境が異なります。オナガガモが好きなのは、本来はその体型が活かせる水が深めの場所だと思いますが、もっと好きなのは「エサやり」がある所です。ハクチョウを餌付けしている観光地で、ハクチョウがおびただしい数のオナガガモに囲まれている光景を見たことがあると思います。井の頭池に来始めたのは1970年ごろで、ピークの90年代には1300羽を超えたこともあります。来園者のエサやりがオナガガモを呼び寄せたのです。

2007年3月1日に「エサやり自粛キャンペーン」が始まりました。たくさんいたオナガガモは、その翌日は減りませんでしたが、翌々日に激減しました。近くのエサやりのある公園へ一斉に移動したのです。ほかにも、他の種類のカモの真似をしたり、新たな採食法を編み出したりと臨機応変で、頭の良さを感じさせるカモです。

現在の井の頭池のオナガガモは、自然文化園の水鳥の餌を頂戴するもの、たまにしか来ないエサやり人をあてにするもの、自分の力で地道に食べ物を探すものなど、さまざまな方法で暮らしています。エサやり自粛以前はいなかった神田川で採食しているものもいます。同じカモでも個性があるのです。以前と比べると激減した井の頭池のオナガガモですが、他の種類のカモとの違いや、個性の違い、頭の良さなどを観察するには十分です。手軽で面白いカモ観察をぜひどうぞ。

 

田中 利秋  井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』2号 2012年1月1日発行 掲載)

オナガガモ のオスオナガガモのオス

オナガガモ メスに求愛するオスたちメス(中央)に求愛するオスたち。オスの尾羽が長くなったのは、より尾羽の長いオスがメスに選ばれ続けた結果だと言われる。


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井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞 いのきちさん 第2号

井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞 いのきちさん 第2号