『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』3号 2012年3月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―
コガモ たちが戻ってきてくれる公園に
漢字では小鴨。カルガモと比べると全長で6割ほど、体重では4分の1ほどの小さなカモで、冬鳥です。井の頭池のカモを1966年から毎冬数えている自然文化園の記録によると、1960年代には4、5百羽も来ていました。
しかしその後渡来数が減り、1990年代の中ごろ以降はほぼ姿を見せなくなっています。池を集団で泳ぎ回りながらメスに求愛するオスの、口笛のような鳴き声が懐かしく思い出されます。4月の初めごろまで池に留まるので、満開の桜との取り合わせも楽しめました。渡来数が減ったいちばんの原因は、 コガモ が採食するのに適した場所が井の頭公園周辺にほとんどなくなってしまったからだと思います。
じつは、井の頭公園と三鷹台駅との間の神田川には、今も毎年10羽ほどの コガモ が来ています。水深の浅い川で黙々と食べ物を採っているその姿を見ようと川を覗き込むと、たちまち逃げ去ります。エサをくれるのかと寄ってくるカルガモとは大違いです。近くの善福寺公園には今も コガモ が来ますが、広々とした上池ではなく、ヨシやマコモが生えている下池のほうにいます。用心深い コガモ は丸見えの場所が苦手なようです。1970年ごろから井の頭池に来るようになり、その後激増したオナガガモは、来園者のエサやりが呼び寄せたものです。 コガモ はそれと入れ替わるように減りました。エサやりは、適応力があり人に慣れやすいカモを増やすだけです。
神田川の コガモ は、以前は夕暮れ前にどこかへ飛び去っていましたが、昨冬からは神田川で夜を過ごすようになっています。そこから目と鼻の先の井の頭池へ コガモ たちが戻って来てくれるには、池がどう変わればよいのでしょうか。
田中 利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。
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(『いのきちさん』3号 2012年3月1日発行 掲載)
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