井の頭公園の生き物たち|第4回「ミゾゴイ」

2018.01.19

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』4号 2012年5月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

自然文化園に来る野生生物

彫刻館の横でミミズを捕っていた野生のミゾゴイ(サギ科)です。環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類。ほぼ日本だけで繁殖する夏鳥で、個体数は千羽以下と言われています。とても少ないため、よほど運がよくないと見られません。そんな希少な鳥が毎年5月ごろ、渡りの途中に井の頭公園に立ち寄ることが分かっています。普通は夜行性なのに、このように昼間に地上で餌を探せるのは、ここにはあまり来園者が来ないからです。

2010年初めの冬には、水辺で暮らす鳥クイナ(クイナ科)が水生物館横の小川の茂みに滞在しました。昔の井の頭池にはいた鳥ですが、用心深いクイナが安心して過ごせる場所は今は分園にしかありません。

動物園は飼育されている動物を見に行くところと思っている人が多いと思います。でも、じつは野生動物を見にいくのにもよい所です。普通の公園より自然環境の質が高いことが多く、有料なので来園者もそれほど多くありません。しかも夜はほぼ無人です。そのため、貴重種だけでなく普通の野生動物も集まり、ほかでは見られない落ち着いた姿を見せてくれます。彫刻園や彫刻館もある自然文化園は緑豊かで静かな場所が多く、野生の生き物に優しい所です。ぜひ年間パスポートを手に入れて頻繁に訪れてみてください。野生動物観察のよいところは、毎回違うものを見られることです。

もうひとつのお薦めは、水中を横から見ることができる、分園の白鳥池のガラス壁です。水が濁っているため見えるのは近くだけですが、運がよければ、誕生したウキゴリの稚魚たちや、小魚を襲うオオクチバスなど、池の中のドラマを目撃することができます。

 

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』4号 2012年5月1日発行 掲載)

白鳥池のウキゴリの稚魚(5月)。ウキゴリはハゼ科の在来種。


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