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井の頭公園の生き物たち|第14回「ミシシッピアカミミガメ」

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』14号 2014年1月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

捨てられたカメ

名前のとおり、米国南部ミシシッピ川周辺が原産のカメで、耳の上方に赤い模様があります。幼体はご存知ミドリガメ、井の頭池のアカミミガメは捨てられたペットかその子孫です。

在来のカメたちが10月から4月まで約半年間も冬眠するのに、このカメは冬でも活動するものがいます。丈夫で大きくなり、性質が荒いので、そして産卵数も多いので、生活が競合する他のカメを圧倒して増えています。何度か駆除が行われたにもかかわらず、井の頭池で現在最も数が多いカメです。

わずかに残っている日本固有種ニホンイシガメが増えられるようにするにはアカミミガメを減らす必要がある、というのが専門家の意見です。もちろん、数が多ければ捕食される生き物への影響も大です。ヒナなど小さな水鳥を襲うところも目撃されています。大きくなると植物をよく食べるので、井の頭池に水草を増やすのにも障害になりそうです。今は要注意外来生物ですが、環境省は特定外来生物に指定する検討を始めました。

我々は昨年から捕獲テストをしています。カメワナを仕掛けると何匹も獲れたのに、今年冷凍庫を導入して安楽死処分を始めたとたん、ほとんどワナに入らなくなりました。どうしてばれたのか謎ですが、彼らが常に他の個体の動向を把握しているため異変に気付いたのではないかと想像しています。

井の頭池にたくさんいたカメが冬はどこにいるのか、不思議に思っている人もいると思います。彼らは池の底で冬眠しています。喉や腸から水中の酸素を取り込む能力があるので、体温が下がり代謝が低下する冬は肺呼吸をしなくても生きていられるのです。

池のかいぼりをしても、カメたちは泥に潜り込んでいるので簡単には見つけ出せません。しかも水がないところも歩いて移動できます。賢くしたたかなアカミミガメとの知恵くらべは今後も続きそうです。動物愛護管理法の罰則が強化されています。絶対に飼っているカメを捨てないでください。

 

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』14号 2014年1月1日発行 掲載)

ミシシッピアカミミガメ 産卵中のミシシッピアカミミガメ

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