株式会社文伸 / ぶんしん出版

井の頭自然文化園の動物たちと飼育員|その13「オシドリと高橋孝太郎さん」

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』33号 2017年3月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

仲睦まじい夫婦を「おしどり夫婦」と呼ぶぐらいだから、きっと本物のオシドリは夫婦仲がいいに違いない、と思ったら大間違い。毎年12月ごろにペアになり、春に卵が産まれ、メスが抱卵している間こそオスは見守るけれど、ふ化直前には別行動。翌年に同じ2羽がペアになることはまれなのだとか。「じつはいいかげんな鳥なんです」と担当飼育員の高橋孝太郎さんは笑います。

「夫婦だけじゃなくて、親子のつながりも希薄なんですよ」と高橋さん。生まれてすぐのころから、ひなは自らえさ場に行って食べます。大人の鳥にくっついて暖をとるときも、必ずしも母鳥に近づくわけではありません。よく言えば、子どものころから独立独歩、自立心旺盛です。

親に頼らず生きる生命力の強さは、脚力に現れています。他のカモはせいぜい10cmほどしかジャンプできませんが、オシドリはひなでも30~40cmは楽勝。もともと野生では木がうっそうと茂る森に暮らし、巣も高ければ地上10mの木のうろにあって、そこから飛び降りるところから、ひなの食探しが始まります。

自然文化園では観察しやすい高さに巣が設置されています。ひなの行動力が見られるのは5~6月ごろ。9月下旬には成鳥となり、オスは見事な羽に生え変わります。

 

取材:小田原 澪(おだわら みお) 編集者・ライター。フィールドは多摩。三鷹市在住

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(いのきちさん33号 2017年3月1日発行 掲載)


← その12「ネズミと浅見準一さん」

→ その14「オオサンショウウオと木船崇司さん」


*下記の画像リンクから、本号をPDFでご覧いただけます